カルダーノのコスモス
2008-01-02


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アンソニー・グラフトン 榎本恵美子/山本啓二訳 カルダーノのコスモス―ルネサンスの占星術師 勁草書房 2007年 を購入した。年末から年始にかけて飛行機を乗り継いだ強行日程を終えて自宅に戻ってきた。移動時間が多いのでこれはと思う本をじっくり読もうと思っていたところ上の新刊書を見つけた。この本はルネサンスの占星術師に関する学術的な研究書でカルダーノに焦点を当てながら当時の占星術がどういったものであったか豊富な文献を駆使して論を展開している。内容はなかなか難解でそんなスラスラと読める代物ではないが、これだけ精密な議論をしているルネサンス占星術の本は初めてで興味深い論点も多い。ただし訳文は横書きで句読点にカンマを使っているなど読みづらい所もある。

まだ全部を読み切ったわけではないが第一章占星術師のコスモス、最終章、参考文献、訳者の解説とあとがきに目を通した。カルダーノとノストラダムスはほぼ同時代に活躍した占星術師という共通項があることから本書でもいくつか言及がされている。ただしノストラダムスに対するグラフトンの評価は至って厳しい。24頁には、ルネサンスの最も悪名高い占星術師ノストラダムス(当時も、また現代でも華々しいペテン師と見られている)と書かれている。この具体的な根拠となるものは示されていない。グラフトンのノストラダムスに関する参考文献はジャン・デュペブの『未公刊書簡集』と故ピエール・ブランダムールの『校訂版予言集初版』と『占星愛好家ノストラダムス』である。

ノストラダムスが顧客に対して占星術上のアドバイスを行ったのを経済活動としている。ノストラダムスが予言集の出版により名をあげて有名人として身を立てると、商売のやり方を変えて個人資産家のためのホロスコープを用意した。そしてノストラダムスがトゥベに宛てた書簡39を引用してカルダーノ流のオーダーメイド占星術を通常の業務として実践していたと見る。日本ではノストラダムスの実践した占星術がどのようなものであったか十分な紹介がされているとはいえない。本書はその入口への案内となろう。
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