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この仕掛けは初めて見た。羽生の3勝、久保の1勝で迎えた王将戦第五局の第一日目が終わった。久保の四間飛車は予想されたが羽生の急戦は少々意外であった。再度藤井システムｖｓ居飛車穴熊かと思っていたからだ。急戦と決まれば手は早い。28手目の羽生の△７二飛が最新形らしいのだが、あまり例のない形である。32手目の△６五歩と早速仕掛ける。解説によればまだ４局しか出現していない局面らしい。これで居飛車が良くなるのであればこんなシンプルな仕掛けもない。角交換した後の展開はほぼ一本道である。

封じ手の局面は後手が力をためて△７三桂と跳ねたところ。先手の指し手が悩ましい。後手は△８六歩の突き捨てから△６六歩〜△７八角の手を権利として握っている。これを避けるために振り飛車の角打ち▲６六角や▲５七角も考えられるが、居飛車側が４筋の歩を伸ばしてくるようなゆっくりした展開を目指すと先手の方針が難しい。▲４七金もバランスが悪そうなので▲４七銀はどうだろうか。次に▲３八金と締まれば角打ちに強い陣形となるが、あまり進展性が望めない。見れば見るほど悩む局面である。ここで相手に封じ手番を渡すというのも羽生の一流の勝負術かもしれない。

こういう将棋は均衡が崩れると一気に形勢が傾いてしまうもの。なんとか久保の封じ手が好手となって、手に汗握る終盤戦を戦ってほしい。