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樺山紘一 ルネサンスと地中海 中公文庫 2008年 をようやく読み終えた。1996年に中央公論社の「世界の歴史16」としてハードカバーで刊行された豪華本を文庫化したもの。当時の本の帯には「21世紀に生きる日本人のための世界史」とある。今回と同様に第1回発売であった。早いものであれからすでに12年も経ってしまった。しかしその内容は決して色褪せることはなく新鮮な目で読むことができる。文庫版では「あとがきとしての補遺」で本文では簡単にしか触れていない印刷革命について述べている。
ルネサンスという時代は実に様々な事象が時間的、空間的に大きな広がりを見せており自分自身の関心も高い。これほどまでに広範な変革の時代を全体を照らし出す明かりとともに一本の太い幹を置くことで事象の相互の関連性を鮮やかに浮かび上がらせている。さらにその幹をたどって枝葉へと入り込み、実際にそこに生きた代表的な人物を「人々の肖像」というコラムで多彩な側面を描き出すのに成功している。もともとのオリジナル版にはカラー図版がふんだんに盛り込まれてヴィジュアル的にも華やかさを醸し出している。
文庫では大部分がモノクロになっているのはやむを得ないが、図版の省略がないところが良心的な作りになっている。この本を読むとイマジネーションが豊富に働き、様々な思考パターンの手助けになる。ルネサンスという時代を捉える際にあたかも長編の詰将棋でも解くかのような感覚になる。特に「4 見えるもの、見えないもの―ルネサンス精神の夏」はノストラダムスの背景を理解する基本事項として押さえておきたい。この本はかなりお勧めである。
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