ロスジェネはこう生きてきた
2009-09-06


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雨宮処凛 ロスジェネはこう生きてきた 平凡社 2009年5月 を読んだ。今週末のニュースを見ていると、民主党による新政権の話題で持ちきりである。これまでずっと日本の政治の中心で権力を揮った自民党への不満、現代日本に蔓延している閉塞感を何としても打破したいという国民意識が表面化した結果なのであろう。自分自身はそれほど政治に関心があるわけではない。ほどほどの仕事に就き、ほどほどの収入を得て平々凡々の毎日を暮らしている。新聞で報じられる派遣切り、ワーキングプア、いじめ、自殺等々、自分には関係のない遠い世界のことにしか思えなかった。この本は著者自身がロスジェネと自認して、社会の日陰の世界に生きる人たちの周辺を赤裸々に描いている。読み終えて軽いショックを受けた。

タイトルにあるロスジェネとは「失われた世代」をいう。バブル崩壊後の失われた10年に社会に出た世代、1972年から82年生まれの就職氷河期に当たる。社会に息苦しさを感じながらも、もがき苦しみながら生きてきた25歳から35歳の若者を指す。本書は日本あるいは世界の社会的事件と見比べながら著者自身の歴史をなぞっている。その自分史は衝撃的でもある。どうしてこれほどまでに日本社会に歪みが生じてしまったのか。そのあたりを自らの体験をもとに具体的に書き記し、その上積極的な行動を起こしている。老後の年金の問題、働きたくとも働き先がない、そんな若者たちは製造業の派遣労働者として、いつリストラされて住むところさえ失われてもおかしくない厳しい職場環境のなか低賃金で働いている。

前回の総選挙で掲げられた郵政民営化は、薔薇色の未来どころか実際には若年層の「不安定雇用」や「貧困」のような格差社会をさらに促進させた。自分がいくら頑張ってもどうにもならない、住みづらい社会。その結果いつか現状をリセットしてもう一度やり直せる社会を渇望したのが今回の総選挙の結果ではなかったか。ノストラダムスの歪んだ解釈、近未来の人類滅亡という幻のデストピアがサブカルチャーに支持されたのは、同じように時代の申し子だったのかもしれない。
[読書]

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