「わかる」とはどういうことか
2010-02-28


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山鳥重 「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 ちくま新書 2002年4月20日 を読んだ。「わかる」というのは、日常で遭遇する未知の事柄について自分のなかに吸収し、知覚することである。それは本を読んだり、テレビを見たり、友人と話をしたり、仕事におけるコミュニケーションなど、様々なシチュエーションが思い当たる。おそらく「わかる」という心の動きは、意識する場合もあれば無意識のうちに行われる場合もあろう。人にモノを教えるようなときには逆にいかにして「わからせる」かが大切となる。わからないことが「わかる」というのは、それがどういったものであるか、自分自身の経験を総動員して考えることによるものだ。著者である山鳥氏は、神経内科が専門で、脳に損傷が生じたことで認知障害が引き起こされた人たちの診断や治療にあたっている。

その経験を踏まえ、「わかる」をキーワードに例を挙げながら「心像」という心の動きを解説してくれる。新しい事実、新しい経験に立ち向かっていくときには記憶という土台が出来上がって、初めてわかるとか、わからないとか心理的な反応(感情)が生まれる。出来事の記憶、意味の記憶、意識に上りにくい手順の記憶がある。手順の記憶は繰り返し繰り返し実践することによって身体に覚え込ませるもの。こうした記憶という土台が「わかる」ために必要なことなのである。ではどういったことが「わかる」ことなのか。第4章「わかる」にもいろいろある では様々な「わかる」を分類化している。1 全体像が「わかる」 2 整理すると「わかる」 3 筋が通ると「わかる」 4 空間関係が「わかる」 5 仕組みが「わかる」 6 規則に合えば「わかる」

第5章のどんな時に「わかった」と思うか で「わかる」のメカニズムを示してくれる。1 直感的に「わかる」 2 まとまることで「わかる」 3 ルールを発見することで「わかる」 4 置き換えることで「わかる」 これらはプレゼンテーションのポイントと重なる部分が多い。状況に応じて最適な行動を起こすには、複数の行動プラン(選択肢)が必要である。そのときにもっとも適切な行動を選びとる能力が知能と呼ぶものという。この本を読んで、「わかる」ということが少しでも理解できたような気がする。あと必要なものは知能、これがなかなか難しい。
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