フランク・スタッカートの『1999年8月』
2010-09-19


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ノストラダムス雑記帳のブログで紹介のあった、フランク・H・スタッカートの著書"August 1999"(1999年8月)が届いた。1978年刊行の割には保存状態は良好なハードカバーである。まだ細かく読んではいないが予想していたのとは少々違っていた。ニューヨークで出版されたというのでノストラダムスの予言解釈の背景として想定していたのはアメリカで出版された本だった。本の最後に参考文献が挙げられているがノストラダムス関連書は、アレクサンデル・ツェントゥーリオの『ノストラダムス、世界史の予言者』(1953)とジェームズ・レイヴァーの『ノストラダムス』(1952)、ルドルフ・プッツエンの『ノストラダムス』(1958)しかない。一応ノストラダムス予言集1568年と1668年が載っているが、ドイツで刊行された予言集の復刻版に他ならない。前者がエルンスト・クラフト、後者がリヒャルト・シコウスキーによるものだ。アメリカのオカルトブームと連動したノストラダムス現象の系譜への位置づけという狙いは見事に外れたといってよい。

参考文献もドイツ語と英語のものだけでフランス語の文献はない。ここからSTUCKERTという名前も、本来ならドイツ語読みしてシュトゥケルトとするのが妥当かもしれない。1978年の刊行であるが、1973年のエリカ・チータムの解釈本などはまったく参照されていない。序章で言及のあるハル・リンゼイの"The Late Great Planet Earth"(1970)は邦訳で『地球最後の日』(湖浜馨訳)が1973年に刊行されている。その内容は主に聖書の預言から未来を予測したもので、12章では第三次世界大戦のシナリオを論じている。本書は聖書の預言をノストラダムス、ケイシーやジィクスン夫人ら予言者の言葉と重ね合わせて分析を試みている。本文中にはノストラダムスの予言の引用が少なからずあるものの細かい検討を行った形跡は見られない。日本ではフェニックス・ノアの『神の計画』(1974)が先駆けて聖書と予言者たちの予言との関連性について論じている。これが高橋良典著『大予言事典悪魔の黙示666』(1982)に受け継がれたといえるだろう。

題名にある「1999年8月」とはどこから来たのであろうか。スタッカートのいう「1999年8月」は、1999年8月11日に起きる日蝕をノストラダムスの1999年7の月と結びつけたもの。そのとき天には太陽、土星、天王星、火星のクロスが見られ、これがレアな配列なのだという。、これはツェントゥーリオの『ノストラダムス予言世界史』(1977)の55頁以下の引き写しに過ぎない。この本にはご丁寧にホロスコープも作成されており一目でわかる。スタッカートのノストラダムス解釈はヴェルナーから始まるドイツの解釈家の系譜に置いていいだろう。今となってはスタッカートの描いたシナリオは単なる絵空事に過ぎないと一笑に付すことができるが、当時は米ソ冷戦の真っ只中、現実の脅威として共感する者が続いたとしても不思議ではない。
[ノストラダムス]

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