アンリ二世への書簡の全訳がアップされた
2008-05-30


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以前に当ブログでも触れたが、ノストラダムス雑記帳で「書簡」の全訳が公開された。ノストラダムスに関心のある人なら是非とも読んでみてほしい。各節ごとに重要な異文の抽出を行っており、予言集の版本間でいかにテクストがばらついているかがわかるだろう。注釈は非常に専門的なのでノストラダムスに予備知識のない初学者にはちょっととっつきにくいかもしれない。しかしあまり詳細な解説は逆に全体のボリュームが膨れすぎて焦点がぼやけてしまう。アップされたときプリントアウトしようと思ったが、印刷プレビューをかけると全部で95頁にもなるのでさすがに躊躇してしまった。それほどの分量をともなった労作なのである。

公開された対訳をもとに久しぶりにアンリ二世への書簡を読み直してみた。自分でもかなり前に英訳をベースに下訳していたのを思い出してそれと比較しながら読み進めていった。海外の主要文献はもちろん、日本の研究家の取るに足らない訳文まで実によく調査が行き届いているのには感心させられる。これほどの熱意を持った研究は本当に好きでなければできないだろう。細かいところでは気になるところもあるが、それを全部論じるには自分の力量が不足している。あえて一か所挙げると全訳の113e節の注釈。「セザールへの手紙に予言がないというのは事実に反する。」というのは文意からして明らかに不自然である。原文のsans presageを「予言を交えずに」と訳したのがどうか。

このプレザージュという句は予兆とか前兆を意味する。「前兆もなしに」幾つかポイントを示すというのは、序文と書簡を比較した場合に、書簡のほうは事件の根拠として占星術上の星位を明らかにしている。ここでの意味は「序文ではとりわけ天のサインを示すことなく来るべき出来事のアウトラインを打ち明けた」そして書簡においてはそれを補完する重要事件を含んでいる、といいたかったのではないか。直感的な読みなので自信はないのだが・・・
[ノストラダムス]

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