ヴォルスキとウィルス
2021-09-14


ノストラダムスの大事典百詩篇第6巻98番を読んで気になった部分があったので忘れないうちにメモしておこう。この詩の解釈については新型コロナウイルスの記事のなかでも触れられているが指摘するか迷っていたことを覚えている。気になったのは次の箇所の論の進め方である。

飛鳥昭雄は、劇症化した溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症や、エボラ出血熱を引き合いに出した流れでこの詩を解釈した。そして、ヨーロッパの侵略(これが人によるものなのか病原菌による比喩なのか、明示されていない)と、猛威を振るう疫病とに関する詩とした*11。
 この解釈を極端な方向にエスカレートさせたのが、歴史予言研究会のコンビニ本(2008年)で、「ヴォルスキという言葉を組み替えるとウイルスとなる」と主張し、エボラウイルスをはじめとする凶悪なウイルスが人類を滅亡に追い込むのではないかという解釈を展開した*12。

飛鳥昭雄の『ノストラダムス恐怖のファイナルメッセージ』は1999年の刊行、『2012年地球崩壊の驚愕大予言』は2008年に出たので「この解釈を極端な方向にエスカレートさせた」というのは、そうかと読めば特に問題とは思えない。しかし、コンビニで販売された予言関係の本は大概は過去の解釈本の切り貼りであることが多い。「ヴォルスキという言葉を組み替えるとウイルスとなる」という与太話はこの本が初出というわけではない。エボラ・ウィルスによる人類滅亡の危機について、平川陽一の『ノストラダムスの大予言 21世紀への最後の読み方』(1996年)186-187頁にこう記されている。

人類滅亡の刺客は、エボラ・ウイルスだった

とてつもない恐ろしさをもってヴォルスキ災厄が到来する
彼らのとてつもない都市は染まり、悪臭を放つ
太陽と月を略奪し、彼らの寺院を汚す
そして二つの川は流れる血で赤く染まる
(『諸世紀』第六巻−98番)

ノストラダムスが予言したように、まさに「とてつもない恐ろしさをもってヴォルスキ災厄が到来する」のである。ヴォルスキ災厄とは、アナグラムによって、ウイルスと組み換えることも可能だ。

こうしてみると『2012年地球崩壊の驚愕大予言』の記述はこの部分を参照したのは間違いないだろう。ちなみに飛鳥の訳文はこれとは違う独自訳である。四行詩が5行になっているのは原文まま。(88頁)

ヴォルサイ族の壊滅 未曾有の戦慄
彼らの大きな都市は 業病で汚される
太陽と月は略奪され
彼らの寺院は崩壊する
二つの流れは流血で赤く染まるだろう
(未来記 第6章 98)

飛鳥はエボラウイルスとこの詩を結びつけているが、Volsquesが

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[ノストラダムス]

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